白雲無盡時~2度目のアメリカ暮らしを終えて帰国

DC郊外のNorth Bethesdaで暮らしていました。旅、美術館巡り、スポーツ観戦などで日々を楽しんでいました。日本に帰国してからもこの趣味をどうやって続けるかが課題です。

Naledi: a baby elephant's tale @ DCEFF25

カーネギーサイエンスで、ボツワナのアフリカゾウ保護キャンプで暮らす赤ちゃんゾウNalediのドキュメンタリー映画を観てきました。生後6か月でお母さんゾウが病死してしまったために、栄養を取ることができなくなってしまったNaledi。このNalediをなんとか生かすために人々が奮闘する様子が描かれていました。アフリカゾウの群れの絆が表情豊かに映し出されていて、人間以上に絆が強いことが伝わってきました。

一方で、アフリカ大陸に生息するアフリカゾウの数を数えるという途方もないプロジェクトも紹介されています。エチオピアのアフリカゾウ保護区が人間の居住地に変わってしまっていて、アフリカゾウが一匹もいなくなっている現実、そして、象牙の取引のために殺されるアフリカゾウ。地域によってはまだ象牙の取引が禁止されていないことを初めて知りました。

http://www.vulcanproductions.com/our-work/naledi/

 

さて、今日でEnvironmental Film Festivalは閉幕です。合計8本を今年の会期中に鑑賞しました。映画の内容が多様で、かつ、質がとても高い作品がこの映画祭には集まっているので、来年もぜひ参加したいと思います。

Happening @ DCEFF25

Robert Redfordの息子のJamie Redfordによる再生可能エネルギーの取り組みに関するドキュメンタリー映画Happeningを観てきました。Redfordなだけに、これまで見てきたドキュメンタリーとは少し違って、洗練された大人向けの仕上がりになっていました。

AppleがUS国内では100%Renewable Energyを使っていてデータセンター用に自前で太陽光の発電施設まで持っていること、カリフォルニアの先進的な取り組み、ネバダでの揺り戻しなど、いろいろな事実がRedfordの目線を通して語られていました。なにより、彼自身がとても自然体で、だからこそ共感を覚え、見応えがありました。

まだ製作途中での公開だったようです。完成版が楽しみです。

www.happeningfilm.org

Return of the Atom @ DCEFF25

フィンランドの原発建設に関するドキュメンタリーを観てきました。会場はフィンランド大使館で、北欧らしい素敵なデザインの建物でした。配布されていたフィンランド冊子も構成がとても素敵でした。北欧ブランディング恐るべし。

この映画は、チェルノブイリの大事故の後に、ヨーロッパで初めて建設が始まったOL3という原発が舞台になっています。2004年に仏アレバと独シーメンスがジョイントベンチャーを組んでフィンランドの電力会社TVOの原発の建設を開始しました。2008年に完成予定だったものの、今(2017年)も完成に至っていません。現時点での完成予定は2018年とのこと。この映像を見る限りでは、OL3は猛烈に複雑なシステムとなっており、しかもその設計が逐次変更されるため、いざ建設に着手してもやり直しが発生したりと、とんでもないプロジェクトになってしまっているとのこと。作業員の一人が「祖父も父もOL1やOL2建設プロジェクトに携わってきて、彼らはそれを誇らしげに私に語ってくれました。でも私はOL3プロジェクトにかかわったことを自分の子供には話したくないです」と言っていたのがとても印象的でした。

どちらかというとフィンランドでの原発建設を肯定していないドキュメンタリーだと思うのですが、それを堂々とフィンランド大使館で上映している、という点において、フィンランドという国の懐の深さを感じました。

 

 

www.youtube.com

Pristine Seas: Wild Galapagos @ DCEFF25

ナショナルジオグラフィックのPrisitne Seas Projectについてのドキュメンタリー映画を観てきました。プロジェクトは全世界で展開中だそうで、今回のお話はガラパゴス諸島の海洋保護区拡張プロジェクトのお話でした。

ガラパゴス諸島の中でも最も陸から離れた場所にあるWolf島とDarwin島の海中の映像が圧巻でした。ここは惑星の中で最もサメがいる場所とのことで、ハンマーヘッドシャークの群れがウヨウヨしていました。ただ、その年はエルニーニョ現象のせいでサメ自体がこの海域でもあまりみることができなかったそう。死んでしまったわけではなく、より海水温が低い場所に移動しているとのことでしたが、個体数自体も人間の乱獲で減っていることが危惧されているとのこと。

さらに驚いたことに、このドキュメンタリーによると、この海の中では食物連鎖の頂点にいるサメやマグロのほうが餌よりも多いとのこと。にわかに信じがたいため、おそらく、個体数が多いというのではなく、生きていくのに必要な量ということかなあ、と解釈しました。頂点の生物のほうが多いことで、食物連鎖の下層にいる生物は、絶滅を防ぐために、より速いスピードで進化することが促される、というのが海の中のバランスだそうです。海ってすごいです。

この映画のあとにも、映画製作者とのQ&Aの時間が設けられ、熱心な観客との対話がありました。内容をより深く理解できるのでとてもよかったです。

www.nationalgeographic.org

 

National Gallery of Art ~ East Building

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National Gallery of Art でコンテンポラリーアートを鑑賞することができるEast Buildingに行ってきました。SAAM3階やHirshhornともまた違った趣で、ここのコレクションも素晴らしいの一言でした。

今回もまずはDocent Tourに参加してみました。コンテンポラリーアートのツアーを期待していたのですが、今回は彫刻(立体物)のツアーでした。入口に設置されたおおきな立体物に関する説明、1階に展示されている2つの大きな立体物の作品のうちの一つはもう一つの作品に影響を大きく与えていること、さらに吹き抜けに飾られた四角い作品はさらにその影響を受けていること、などなどをじっくりと聞くことができました。普段だと立体作品にはあまり関心がないだけに、勉強になりました。

さて、絵画に話題を移すと、セザンヌやピカソのキュビズムや、アンディウォーホールのポップアート、そして、なぜか印象派のモネが展示されていました。キュビズム作品をじっくりと眺めることで、この手の絵画はあまり好きではないことがよくわかりました。

その一方で、ミニマリズム絵画に心を奪われました。なかでもRobert Rymanの作品に感動しました。白地のキャンバスに白地の絵具を塗る、極限的な抽象画です。下の写真だとまるで家の天井のように見えてしまうのが残念ですが、実物を前にするとなんともいえず引き込まれました。

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この下のリンクの絵画は、さらにシンプルです。白地のキャンバスに白の絵の具を塗った作品です。この作品も観ていて飽きることがありませんでした。

www.nga.gov

 

このEast Buildingには、Hirshhornよりも人がいましたが、とはいえ、じっくりゆっくりと鑑賞することができてとても良かったです。

 

Gaza Surf Club @ DCEFF25

E Street CinemaでGaza Surf Clubというドキュメンタリー映画を観てきました。随分ニッチな映画を選択したつもりだったのですが、映画館がほぼ満席という盛況ぶりに驚きました。

ガザの青年達が、サーフィンのギアの調達やメンテナンスができないながらも、サーフィンに夢中になり、たくましく生きていること。ガザにサーフショップを開くことを夢見て、何度もVISA発給を拒否されながらあきらめずに申請しつづけてついにハワイ行きを実現する青年。ハワイとガザがあまりにちがいすぎて戸惑いつつも夢をあきらめていない青年が、数年たってもまだガザには帰っていない現実。

この映画のテーマ自体は重いだけに、全編を貫く明るいトーン、美しい映像、ユーモアあふれる住民のやりとりが返って心に響きました。

 

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Conservation I @ DCEFF25

今日はCarnegie Institute of Scienceにて絶滅危惧種の保護に関するショートフィルム集を観てきました。上映されたのは下記の4つです。

とくに最後のRed Wolf Revivalは悩ましいテーマだと思いました。

絶滅寸前のRed Wolfを保護するために、North Carolinaで保護区を設定し保護活動を開始。しかし、地元住民にとって害獣であるコヨーテとの区別がつきにくいため誤って駆除してしまうこと。さらに、そもそもWolfは厄介と思われているためRed Wolfの絶滅を宣言して保護区を廃止する方向に向かっていること。「ベンガルトラやアフリカの象の保護が進まないのは現地の人々の無理解のせい」だと思っていたのに、実はアメリカでも同じことが起きていること。

重いテーマだけに、上映後のQ&Aでも特にこの映画の監督Roshan Patel氏とのQ&Aが活発になされました。とくに感動したのは、監督自身が建設的にこの問題に取り組んでいたことです。地元住民にこの映画を見せて啓発&対話集会を開催したり、映像を貸し出して学校での啓発活動につかったり、North Carolina以外で保護してくれるところを探したり。解決には時間がかかるものの人々の善意を信じている様子が、静かに、そして、力強く伝わってきました。

こういうドキュメンタリーモノを見た後で制作者の意図をQ&A形式で知ることができるのはよいなぁ~と改めて思いました。

vimeo.com

 

Voices from Chernobyl @ DCEFF25

環境映画祭で上映されている映画を観てきました。Hirshhorn美術館で上映されたVoices from Cherobyl。ドキュメンタリー映画だろうと思っていたら、そうではなく、Cherobylの被害後の数人の人生が、抑制されたトーンで、語られていました。ルクセンブルク制作で全編フランス語なので、英語字幕です。字幕を読むのに必死で(笑)、美しい映像をじっくり観る余裕がありませんでした。チェルノブイリはウクライナにあるのですが、この映画ではベラルーシの被害についても多く語られていました。誰もいない大地に木々などの植物が繁茂している様子をみると、もののけ姫のワンシーンを思い出しました。シシ神様の最期に吹く風が大地の自然を再生させる、あの風景です。

250人ほど収容できるRing Auditoriumには、ざっと見て100名くらいが集まっていました。帰宅時には、案の定メトロのシングルトラッキングが始まっていて、帰宅に時間がだいぶんかかりました。

www.youtube.com

SAAM再訪

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イサムノグチ展が今週末で閉幕するので、最後にもう一度鑑賞してきました。何度見ても飽きることがなく、こんな作品あったっけ?と思いながらとても新鮮な気持ちで鑑賞しました。

これまで存在に気づいていませんでしたが、信楽焼の作品がありました。石や岩を加工した作品が多いだけに焼き物の作品は異色でした。Atsumi-sanという名前の作品です。

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イサムノグチ展をじっくりと時間を過ごした後、3階に移動してコンテンポラリーアートを鑑賞しました。今回は4月上旬に終わってしまうGene Davis展をメインに回ることにしました。縦じまのカラフルな作品群。イサムノグチのように、なぜか心が穏やかになる、というようなカテゴリーの作品ではありません。一目でGene Davisだとわかる、特徴的な画風です。

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Pursuit of Silence @ DCEFF25

Smithsonian National Museum of Natural Historyで上映されたPursuit of Silenceを観てきました。500人くらい入りそうなホールがほぼ満員でした。

映画は自然の音のみで構成された映像で静かに始まり、日本の禅や茶道の精神性と静かさの関係が語られ、騒音が大気汚染に次ぐ世界の公害の一つであること、Silenceは音があってこそ認識されること、「教育はとても大切」と言っている割には小学校の真横を電車が走って授業がたびたび中断することを甘受する社会の矛盾、などなど、これまで誰でもなんとなく感じていたことを美しく構成した映画でした。

上映後には制作者側が登壇し、観客とのQ&Aセッションがありました。これがなかなか興味深かったです。

静かさを恐れるのはなぜでしょうか?という問いには、自分自身と対峙するのが怖いから、という哲学的な答えが帰ってきました。

Silenceがテーマなのになぜこの映画ではピアノのBGMが多用されているのか?という問いには、BGMを入れないと映画館のエアコンの音や隣に座っている人の咳の音などが気になってしまいむしろ集中して映画を見れないから、という回答があり、なかなか奥深いと思いました。

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