白雲無盡時~2度目のアメリカ暮らしを終えて帰国

DC郊外のNorth Bethesdaで暮らしていました。旅、美術館巡り、スポーツ観戦などで日々を楽しんでいました。日本に帰国してからもこの趣味をどうやって続けるかが課題です。

National Museum of African American History and Culture

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3か月前にTimed Passをインターネットで入手し、ついに話題のアフリカンアメリカン博物館に行ってきました。平日なのに博物館の外も中も人でごった返していました。Yayoi Kusama展みたいに並ぶのかなぁと思っていましたが、とくに並ぶこともなくあっけなく入ることができました。入った入口がよかったのかもしれません。Consititution Ave側の入口だと、空いていました。

中に入ってみると、鑑賞して疲れ果てた人々が玄関ホールにたむろっています。ほかのスミソニアンでは見かけない光景です。いったん出ると再入館できないからかもしれないです。

さて、こちらの博物館は地下に常設展示があります。まずエスカレーターで地下1Fに降りて、そこからは大きなエレベーターに乗って地下2Fに直行します。この構造を知らずに入館したのですが、ヒトの流れについていくと自然にたどり着くことができます。

地下の常設展の展示内容は、想像以上に、重く、つらく、痛ましい内容でした。

奴隷としてアフリカから誘拐されアメリカに連れてこられ、想像を絶する重労働と非人間的な扱い。彼らの犠牲はアメリカ南部だけではなく、全米の発展の礎だったこと。

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憲法の文章と現実の矛盾。ジェファーソンは建国の父の一人ですが、有色人種に対する発言は衝撃的でした。私は「Men」という点にもいつもひっかります。

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そして奴隷解放を大義とした南北戦争が北軍勝利で終わったあとも奴隷解放がすぐにすすんだわけではないこと。

その後の2度の大戦での扱い。

戦後の市民権運動黎明期の惨劇。とくにEmmett Tillの展示は、読めば読むほどもうどうしようもなく気持ちが沈み、どよーんとする一方でした。

そして市民権運動の名もなき市民たちの勇気と悲劇。Rosa Parksの衣装やGreensboroのランチカウンターの一部が展示されていました。

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そして現在。ここまでの展示を見てきて、オバマ氏が大統領に就任したのは万感の出来事だったんだろうなぁ、と改めて感じました。しかしながらまだ出口が見えているわけではないことを訴えるビデオが最後に上映されていて、心を強く揺さぶられました。

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感受性が豊かな人であれば、つらすぎて途中で休憩しないと気分が滅入ってしまい、見続けられないとおもいます。そんなときにはこの広場で一息つくのがぴったりです。

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なぜ上から水が落ちてきているんだろう、と思ったら、これはMartin Luther King Jr 牧師の言葉をモチーフにしているからなのです。

"We are determined ... to work and fight until justice runs down like water, and righteousness like a mighty stream"

この具現化にグッときました!

 

全般として、中のつくりと展示は非常に凝っていて、見応えがあります。私の場合、見応えがありすぎて見続けるのがつらく、1度の見学ではとても全部を見切れませんでした。

見学者の数は多く、遠足で来ている中高生も大量にいます。熱心に見学している人も人種に関係なく多くいました。他のスミソニアンとは、見学者の熱心さが少し違うように感じました。ミュージアムショップも入場制限がかかるくらいの人混みで、開館からもうすぐ1年ですが、まだまだ人気は衰えていないようです。

この展示内容を考えて実現した人々の熱意と労力は、とてつもなく膨大だったと思います。それに呼応するかのように、見学者がそれぞれの思いを胸に熱心に展示を見学している様子をみると、改めてアメリカの大きさを感じました。

 

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