イスタンブールの野良猫のドキュメンタリー映画です。ネコのドキュメンタリーと言えば岩合さんのネコ歩きを真っ先に思いつきます。岩合さんの番組は、ネコとその風景の空前絶後の美しさに加えて、岩合さんの暖かい眼差しとにかく癒されます。一方でKediは、岩合さんの番組のように静かにゆっくりとネコのペースで進行していきますが、ネコよりもネコにかかわる人々の心情のほうが印象に残る造りになっていました。
激動の歴史を潜り抜けてきたイスタンブールで、何千年も続いてきた人間と野良猫の独特の関係。今でもその関係を守りつつ、ここ数年の急激な街の開発によって野良猫が住めなくなるのではないかと心配する人々。そして、野良猫のことだけではなく、環境の急激な変化から取り残されてしまった人々自身の不安が強く伝わってきます。世界のいたるところで起きていることが静かに表現されていました。
描かれているイスタンブールの美しい風景にウットリします。数年前に旅したイスタンブールを鮮明に思い出させました。古い町並み、西洋とイスラムの混在、街の喧騒、雑然さ、貪欲さ、人混み、野良犬、野良猫、未来への期待、急激な変化に対する不安。「リラックス」とは対極にある独特の場所。最近は物騒な事件も発生しているので以前のように気軽に旅に行く場所ではなくなっていますが、またいつか旅したい場所です。
ちなみに全編トルコ語なので、英語の字幕で映画を見ました。字幕の切り替わるスピードが速くて、ついていくのに必死でした。